バリアフリーリフォームの基礎知識と費用の相場
住み慣れた自宅であっても、年齢を重ねるにつれて不便を感じることは少なくありません。また、場所によっては転倒による怪我のリスクが高いところもあります。
安心して暮らし続けるためには、バリアフリーリフォームを行うことをおすすめします。バリアフリーリフォームの内容は、手すりの取り付けから間取りの変更まで大小あります。
そこで今回は、バリアフリーリフォームの基礎知識と費用相場について、解説していきます。
バリアフリーリフォームの目的
バリアフリーリフォームを行う主な目的は、家族が安全かつ快適に暮らせる住環境を整えるためです。家族の中に高齢者やケガ人、病人などがいない場合であっても、将来に備えてリフォームを検討するケースも少なくありません。長期的に見て安心して暮らせる住まいを確保することで、万が一の時に役立ちます。
また、近年は住まいにおける高齢者の事故が増加していることから、幅広い世代でバリアフリーリフォームへの関心が高まっています。「高齢者社会白書」が発表したデータによると、65歳以上の高齢者のうち8割近くは住宅内で事故に遭っているとされています。
とくに、居室や階段での事故が多い傾向にあります。このような家屋での事故を未然に防ぐためにもバリアフリーリフォームは重要です。
バリアフリーリフォームの主な工事内容
バリアフリーリフォームの具体的な内容を紹介します。
手すりの取り付け
住まいに手すりを取り付けることで、移動しやすくなるとともに転倒事故を防止できます。主に、トイレの出入り口や廊下の段差前、部屋の出入り口などに取り付けられます。
手すりを取り付ける際には、使う人の背丈や動作を確認した上で握りやすい形状・素材の手すりを採用するとよいでしょう。1本あたり数万円~リフォーム可能です。
段差の解消
段差を解消することで足腰への負担を低減できます。スロープを設置するなどのリフォームを行うと、つまずき対策として役立つだけでなく、車いす移動もスムーズになります。具体的には、玄関の段差や廊下と部屋の間の段差、浴室の段差などが対象となります。
すべりにくい床材への変更
床材を滑りにくい素材に替えることで、転倒による怪我を防げます。とくに注意したい箇所としては、浴室や洗面所などの水まわりや雨で濡れやすい玄関などが挙げられます。
滑り止め効果の高いノンスリップ加工が施された床材がおすすめです。
ドアの取り替え
開き戸は出入りの動作の支障となりやすいため、引き戸への取り替えをおすすめします。引き戸は車いすユーザーでも開閉しやすく、出入口付近のスペースを十分に確保できます。
ただし、開き戸を設置する場合には引き込む場所が必要となります。間取りによっては設置できない可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
水まわり設備の入れ替え
水まわり設備をバリアフリー対応のものへと入れ替えることで、安全性と快適性が高まります。具体的には、またぎやすい高さの浴槽に交換したり、和式から洋式トイレへと交換したりすることで、足腰への負担を低減できることでしょう。
設備を新しいものへと入れ替えることで、日々の生活の利便性が高まります。
温度差の解消
住まいの断熱性を高めることで、部屋と部屋の間での温度差が軽減し、ヒートショックのリスクが少なくなります。ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が生じることを指します。
とくに、65歳以上の高齢者はヒートショックを引き起こしやすいと言われています。浴室や脱衣所などで温度差が生じやすいので、暖房を設置したり、断熱材を施したりするとよいでしょう。
間取りの変更
ライフスタイルや家族構成の変化に合わせて間取りを変更することで、利便性が高まります。たとえば、寝室・居室からトイレの距離を近づけたり、生活に必要な住宅設備をワンフロアにまとめたりすることで、より暮らしやすくなります。
また、冬場は廊下が冷え込みやすく、ヒートショックの危険性があります。間取りを変更することで、健康的な生活を促進する効果もあります。
バリアフリーリフォームの費用相場
バリアフリーリフォームは、工事箇所によって費用相場が異なります。予算に合わせて必要な工事を行いましょう。
浴室の場合
お風呂場は足元が滑りやすく、住まいのなかでも転倒リスクが高いと言われています。手すりを設置したり、段差を解消したりすることで安心して暮らし続けられます。
手すりを設置する場合の費用相場は3万円~5万円、段差を解消する場合の費用相場は5万円~25万円ほどです。また、滑りにくい床材へと変更する場合には5万円~20万円、暖房を設置する場合は、10万円~15万円ほどとなっています。
トイレの場合
トイレには手すりを設置することで、立ち座りの負担を軽減できます。また、場合によっては便座や便器の高さを調整することで、より楽に排泄できるようになります。
トイレに手すりを設置する場合は5万円~10万円ほどが費用相場となっています。ドアを変更する場合は5万円~20万円、和式トイレから洋式トイレへと入れ替える場合には15万円~50万円ほどかかります。
さらに、生活の利便性を高めたいのであれば居室や寝室からトイレまでの距離を縮めるのもおすすめです。トイレの場所を移動する場合の費用相場は、30万円~60万円ほどとなっています。
玄関の場合
玄関周りは雨や雪などで濡れやすく、家に上がる際に転倒リスクがあります。スロープを設置して段差を解消したり、引き戸へと変更したりするのがおすすめです。スロープの設置にかかる費用相場は5万円~45万円、ドアを変更する場合は20~60万円ほどです。
また、玄関ドアを拡張して出入口を広めに確保するのもよいでしょう。その場合、10万円~15万円ほどが相場となっています。
廊下・階段の場合
廊下や階段は生活動線となるため、広くスペースを確保することで利便性が向上します。廊下を拡張する場合の費用相場は40万円~150万円、階段の幅や勾配を変更する場合は50万円~100万円ほどです。
キッチンの場合
キッチンの設備を改良することで、家事の負担を軽減できます。たとえば、高い場所に収納した物が取りづらいのであれば、電動昇降棚を設置するのもよいでしょう。
また、ガスコンロをIHクッキングヒーターへと変更したり、食器洗い機を導入したりすることで、掃除や片付けの手間が短縮します。電動昇降棚を設置する場合の費用相場は10万円~60万円、食器洗い機を導入する場合の費用相場は10万円~15万円ほどです。
また、IHクッキングヒーターへと変更する場合は30万円~40万円、システムキッチンへと変更する場合は40万円~80万円ほどとなっています。
洗面所・脱衣所の場合
洗面所や脱衣所などの水まわりは滑りやすく、転倒のリスクが高いので、ノンスリップ加工が施された床材への変更をおすすめします。また、車いすユーザーや介助が必要な高齢者がいる場合には、空間を広く確保するのも有効です。
滑りにくい床材へと変更する場合の費用相場は5万円~10万円、洗面所を拡張する場合には30万円~50万円ほどかかります。
まとめ
今回は、バリアフリーリフォームについて、基本的な知識と費用相場を紹介しました。バリアフリーリフォームとは、安心して暮らし続けるために行うバリアフリー改修工事のことです。
具体的には、手すりの設置や段差の解消、間取りの変更などが挙げられます。住まいをバリアフリー化することで、転倒による怪我のリスクを軽減し、生活の利便性を高められます。
バリアフリーリフォームにかかる費用は、工事箇所によって異なりますが、小規模な工事であれば数万円台から対応しています。予算に合わせて優先順位をつけて工事を進めるとよいでしょう。
本記事が参考になれば幸いです。