バリアフリーリフォームの基礎知識!費用や注意点も解説
家族に高齢者がいる方や将来を考えて、バリアフリーリフォームを検討している方もいるでしょう。段差のない住宅は、移動がスムーズになり、暮らしやすさも向上します。
そこで今回は、バリアフリーリフォームの基礎知識についてまとめてみました。費用や注意点についても紹介しているので、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
バリアフリーリフォームの重要性と賢く進めるポイント
バリアフリーとは、わかりやすくいうと「バリア(障壁)のない場所」を意味します。道路や建築物において、段差や障壁を取り除いてつくられているため、これまでは障害のある人や高齢者が安全に生活できることを目的としていました。
しかし現在は、あらゆる人・分野に用いられており、身体的問題を抱えていない人でも、バリアフリーにすることでスムーズな移動が可能になります。
ここでは、バリアフリーリフォームをする重要性と賢く進めるポイントを紹介します。
目的と重要性
バリアフリーリフォームをする目的は、安全で快適な住環境を確保するためです。とくに障害がある人や高齢者に適しており、将来を考えてリフォームに取り組むケースも珍しくありません。
一方で重要性については、段差やバリアがあることで起こる高齢者の事故が大きく関係しています。65歳以上の高齢者のうち77.1%が住宅内で事故に遭っており、それを防ぐためにバリアフリーリフォームが重要視されるようになりました。
ポイント1:優先順位を考える
リフォームを賢く進めていくには、いくつかのポイントがあります。
まず、優先順位です。どの場所を工事するかによって費用はもちろんのこと、工期も変わってきます。とくに予算に限りがある場合、無計画にリフォームをするのは危険です。使用頻度の高い階段や水まわりなど、必要性の高い場所を優先的に行うことで、かしこく進められるでしょう。
ポイント2:車いすの移動
家族に車いすの利用者がいる場合、車いすの移動を考慮することも大切です。そのためには、段差を撤去するのはもちろんですが、通路や出入口を拡張し、スムーズに移動・方向転換できるようにしておく必要があります。
予算に余裕がある方は、日常生活を1階で済ませられるように平屋へ建て替えるのもおすすめです。
ポイント3:実績のある業者を選ぶ
バリアフリーリフォームは、安全面や介助のしやすさなども考慮して工事計画を立てる必要があるため、実績のない業者に依頼するのは非常に危険です。かならずバリアフリーリフォームに特化した業者を選びましょう。
安全や快適な生活を想定して、プランニングしてくれることも大切です。
ポイント4:工事計画は早めに
実際にバリアフリー化が必要になってからリフォームをするのではなく「そろそろ必要かも」というタイミングで行うのがベストです。将来を見据えて早めに工事計画を立てておけば、突然のケガや病気のときでも安心して生活できます。
バリアフリーリフォームをしたほうがいい場所
自身が希望する場所であれば、基本的にどこをバリアフリー化にしても問題ありません。しかし、住居においては「生活のしやすさ」を重要する必要があるため、ただリフォームするだけではNGです。
ここでは、とくにリフォームしたほうがいい場所を紹介します。
水まわり
浴室やトイレなどの水まわりは、もっともバリアフリー化が多い場所です。浴室なら転倒事故が発生しやすいですし、トイレならバリアフリーのほかに手すりの設置も欠かせません。
一般的に、浴室は出入口の段差を撤去する以外に、床材を滑りにくいものに変えたり、暖房器具を設置したりなどが挙げられます。浴槽へスムーズに出入りできるように、手すりを設置するのもおすすめです。
一方でトイレも、浴室と同様に段差を撤去し、手すりを設置します。和式トイレを使っているなら、洋式トイレへ変更するのもおすすめでしょう。車いすを利用している方は、ある程度出入口を広げることも忘れてはいけません。可能であれば、寝室の近くにトイレを作っておくと、移動の負担も軽減できます。
ドア・階段・床
意外と負担になりやすいのがドアの開閉です。スライド式にすることでスムーズな開閉が可能になり、ドアノブをレバーハンドルにすることで力を入れずに開けられるようになります。車いす用に、ドアを大きくするのも効果的です。
階段は、できる限り段差をなくすことでケガの発生リスクを軽減します。むずかしい場合は手すりの設置や足元にセンサーライトを設置するだけでもずいぶん違います。
床材も、引っ掛けたりつまずいたりしないように、フラットで滑りにくいものを選びましょう。
温度差
バリアフリーリフォームと聞くと、段差を撤去するだけに思われがちですが、ドアの取り替えや床材を滑りにくいものにするなど、ほかの面も考慮して工事をすることになります。
また、温度差の解消も欠かせません。とくに高齢者がいる場合、寒暖差によるヒートショックのリスクが懸念されます。浴室や脱衣所には暖房を設置し、極端な温度差を避けましょう。
間取り
間取りの変更も、生活の利便性を向上させるうえで欠かせません。たとえば、寝室の近くにトイレを設置したり、1階に必要な設備をまとめたりするなどが挙げられます。生活動線をスムーズにしておけば、家中を動きまわらずに済むだけでなく、冬の寒い廊下もストレスになりません。
知っておきたい費用相場と注意点
バリアフリー化には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?場所によって大がかりなリフォームになる可能性があるなど、事前に知っておくことで安心して工事の依頼ができます。
ここでは、補助金や注意点とあわせて解説します。
費用相場
工事では、段差の撤去と併用して、手すりの設置や床材の変更なども行います。そのため、どこをリフォームするかで費用相場は大きく変わってきます。
まず、水まわりの場合、浴室は手すり・段差・床材・ドア・暖房などを工事することになります。手すり・段差の撤去だけなら3~25万円程度で済みますが、ほかの場所もリフォームすると費用相場はぐんと上がります。トイレは、手すり・段差・ドアのほかに、和式から洋式の変更が15~50万円、補助便座が5~10万円、トイレの場所移動が30~60万となっています。
洗面所・脱衣所は、床材や洗面台の位置などを変更し、車いすを利用する方は拡張の工事も必要です。費用相場は、床材の変更が5~10万円、洗面台の拡張が20~35万円、車いす用の洗面台を設置する場合は30~50万円となります。
次に、廊下・階段です。住まいの動線になるため、できる限り余裕をもって工事するようにしましょう。相場は、廊下の拡張が40~150万円、階段幅・勾配の変更が50~100万円、滑り止めの設置は1~3万円です。
それぞれの費用相場はあくまで参考価格なので、正しい費用については依頼する業者へ確認してみてください。
支援制度の利用
バリアフリーリフォームでは、5つの支援制度を利用できる場合があります。
1つ目は、住宅改修費です。介護保険によって受けられ、上限20万円までの工事を対象に、所得に応じて一部補助されます。
2つ目は、長期優良住宅化リフォーム推進事業です。長期優良住宅にすることで、1戸あたり上限100~250万円の補助が受けられます。
3つ目は、補助金・助成金です。国または地方自治体から受けられる制度のことで「高齢者福祉住環境整備」や「高齢者住宅設備改善給付事業」などがあります。
4つ目は、所得税の控除です。一定の要件を満たす方を対象に、投資型やローン型などが設けられています。
5つ目は、国定資産税の控除です。新築から10年以上の住宅に限り、一定要件を満たしたバリアフリーリフォームを行うと適用され、翌年度分の固定資産税のうち1/3が減額されます。
注意しておきたい点
バリアフリーリフォームは、ただリフォームを行うのではなく、対象者の身体状況に合わせて考えることが大切です。足腰が弱いなら手すりの設置や床材の変更が必要ですし、視力が衰えているならセンサーライトも検討したほうがよいでしょう。
また、手すりひとつにしても、取り付ければOKではありません。対象者の身長や身体能力なども考慮し、最適なものを設置するようにしましょう。
まとめ
バリアフリーリフォームの基礎知識と費用相場・注意点などについて紹介しました。
バリアフリー化と聞くと「段差を撤去すればよい」と考える方が多いでしょう。もちろん、段差をなくす=バリアフリーであることは正解ですが、ただリフォームすればOKというわけではありません。
障害がある人や高齢者だけではなく、いっしょに住む家族が暮らしやすいと感じるかどうかも、リフォームをするうえでしっかり理解しておきましょう。